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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)356号 判決

上告人 戸田五之助

被上告人 戸田要一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨は、本人の委託によるも第三者による記名・調印は許さないと主張するが、戸籍法施行規則六二条によれば、戸籍届書には、代書を許すものであること明らかである。調印についても第三者が本人の委託によつてなすことは許さるべきものと解するを相当とする。なお、養子縁組届書に届出人の氏名が、代書された場合にその事由の記載も欠くも、その届出が受理された以上縁組は有効に成立するものと解すべきである(大審院民事判例集一五巻一二九〇頁参照)。論旨は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

○昭和二九年(オ)第三五六号

上告人 戸田五之助

被上告人 戸田要一

上告代理人西村直一ノ上告理由

一、本件養子縁組届出ハ訴外馬場清太郎ガ昭和二十五年五月二十二日被上告人ノ父要助ヨリ養子組縁届出に要スル印鑑ヲ預リ(即チ要助ノ印鑑ニシテ被上告人ノ印鑑ニ非ズ)翌二十三日ニ自ら本件養子縁組届ヲ作成シテ真野村長ニ届出ヲ為シタリ(最初ハ要助ヲ養子トシテ届出シタルモ年長者ナルヲ以テ不受理トナリタリ)

従ツテ右届出書ノ養親及養子ノ署名捺印ハ総テ右馬場清太郎ガシタルモノナリ、即チ本件養子縁組届書ノ届出人ノ署名捺印ハ第三者が書キテ捺印シタルモノナリ。

二、戸籍法第二九条ニハ届出人ガ届書ニ署名シ印ヲおさなければならないトアリテ他人ガ代理権ニヨリテ委任状ニヨリ書類即チ届書ヲ作成シテ代理人ガ署名捺印ヲシ届出ヲ為スコトハユルサレナイ不動産登記法ハ此場合即チ司法書士ガ委任状ニ基イテ登記申請書作成シテ書類ヲ提出スルコトガ通例トスルモ戸籍法ニ於テハ代理ハユルサレナイ、従ツテ此規定ヨリ見ルトゴム印ニヨル記名調印モ亦ユルサレズ、シカラバ他人ガ代筆捺印シタル氏名捺印ハ戸籍届書ニ於テハ総テ無効ナリ、依ツテ本件養子縁組届出ハ法律違反ニヨリ無効ノモノナリ。 以上

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